魔迷宮のセイレーンが歌いません

著:関根パン イラスト:桜木 蓮

冒険者が聞いたら最後! 迷宮内最強は魔性の声!?

STORY

《魔迷宮》——それは《魔王》の『卵』が眠る《魔界》へと続く広大な洞窟である。《魔界庁》のエリート上級悪魔ヴァルクは、窮地に立たされていた! 突然の降格人事により閑職極まる『《セイレーン魔歌隊》』の隊長にされてしまったのだ。しかもセイレーンなのに歌を全く歌わ(え)ないスズたち第八班なるお荷物もいる始末。彼は起死回生の策として、今はもう廃れてしまった『緊縛の歌』を復活させようと考える。その歌で、魔迷宮の攻略を目指す《冒険者》たちを排除しまくれば返り咲きが可能だと思ったのだが……。

鳥魔四人娘が贈るダンジョン・トーク・コメディ開幕!

KEYWORD

魔迷宮とは
地上と魔界とをつなぐダンジョン。全99階。中には魔物がはびこっており、ころころ地形が変わるローグライク仕様。タイトルに冠されているわりには本編にあんまり出てこないとの噂。
魔王とは
大昔に人間を支配しようとして結局しくじった魔物の長。今は魔界の宮殿にある『卵』の中で復活の時を待って眠り続けている。蘇ったら再び人間界を攻める気らしい。ずっと寝てるのでみんなよく知らない。
魔界とは
魔物が暮らす世界。空の魔物も海の魔物も甲子園に棲む魔物も魔界の生まれ。見た感じ人間界とそんなに変わらないが、ややどんよりしている。眠っている役立たず魔王に代わり『魔王代』という役職が治めている。
セイレーン魔歌隊とは
人間の能力を下げたり頭を混乱させたりする魔の歌声を持つ魔物、セイレーンの部隊。非力なので己は戦場に出ず『法送石』という不思議な石の力を使って魔迷宮に歌声を届けている。要するにサポート要員。薄給。
魔界庁とは
魔王代のもとで魔界の自治運営を担っている組織。お役所。どうやら魔迷宮で戦う魔物が所属する『魔軍部』も統合されているっぽい。その辺の設定は曖昧だがあまりつっこまない方が身のためだ。
冒険者とは
魔迷宮にのこのこ入ってくる愚かな人間ども。もともとは蘇る前に魔王を潰すのが目的だったはずだが、鉱石を採ったりアイテムを集めたりする方が楽しくなってきたらしく、攻略しようという気持ちが足りてない。

CHARACTER

ヴァルク
主人公。自分のことを「我」と称する偉そうな悪魔。魔界庁で上級職に就いており、いつか魔王代になるという野望がある。本文中ほとんどの場面に登場するのに挿絵は少ない。まあ、野郎だからしょうがない。
オド
ヴァルクの使い魔で肩乗りサイズの悪魔。あまり難しいことを考える頭はないが仕事はできる、はず。そうは見えないけど一応ガーゴイル。パンツはけよ。
オルガ
三椏槍を振り回す好戦的でアネキ肌のセイレーン。リザードマンあたりに生まれるべきだった。槍をこよなく愛している。三度の飯よりも槍が好き、と見せかけて実際は甘いお菓子とかの方が好き。
ハニモネ
だいたい寝ているセイレーン。本人はたぬき寝入りのつもりだが本当に寝ているので始末が悪い。起きていても余計なことはしゃべらないが、意外といろいろ考えていたり、そうでもなかったり。
スズ
良くいえば天真爛漫、悪くいえば礼儀知らずのセイレーン。その場のノリだけでなんとなくしゃべり、なんとなく動いている。表紙ではメインヒロインづらで一番スペースをとっているちゃっかりさん。
ポエン
真面目なおっぱい。

ILLUST COMMENT

はじめまして! 桜木蓮です!!

桜木蓮さんのコメント

SPECIAL SHORT STORY

セイレーン、魔歌隊のシゴトを語る!

我は上級悪魔ヴァルク。魔界を統べる魔界庁に勤務し出世街道を歩んでいたが、ゆえあって今は魔歌隊隊長という取るに足らぬ職についている。どうでもいい事だが。ある日。我は会議室にセイレーン魔歌隊第八班の四人を集めた。「諸君。魔広報部から取材の要請があった」魔広報部とは、魔界庁やその関連組織の活動と成果を魔界にPRする部署である。「魔界庁の広報紙において魔歌隊の特集を組むそうだ。そこでセイレーン本人の口から活動について説明してほしいとのことである。誰か志願者はいるか?」「はいはーい」橙色の髪をした小柄なセイレーン、スズが朗らかに手を挙げた。「スズよ。では、試しに魔歌隊の活動について説明してみたまえ。魔歌隊とは?」スズはあっけらかんと言った。「魔歌隊は今日も元気!」具体性のかけらもなかった。「あのな、スズ。そんなんじゃ全然わかんねーよ」三叉槍を小脇に抱えた背の高い青髪のセイレーン、オルガが言った。「では、オルガよ。説明してくれたまえ。魔歌隊とは?」 オルガは獲物を狙うような鋭い眼をした。「報酬次第で誰でも殺る。そういう集団だ」いや、そんな物騒な一面はまったくない。「あ、ハニちゃんがなんか説明したそうな顔してる」スズは、背も翼も最も小さいピンクの髪のセイレーン、ハニモネを見て言った。だが、スズの発言は確実に間違っている。「……」机に突っ伏して寝息を立てている者が、説明などしたいはずがあるまい。「ふむ……。ここはやはり、ポエンが適任か」我は無視できない胸部の盛り上がりを持つ銀髪のセイレーンの名を呼んだ。ポエンはかけている丸眼鏡が示すとおり四人の中で最も真面目だ。考え方も常識的で、職務に関する真っ当な知識も持っている。彼女ならば大丈夫。「かかかかしこまりましました。たた隊長さまのじきじじきじきじききじきの指名とあらばば、ポポポポエンはききき緊張などせずりり立派に務めてまいりますすす」まじめすぎるのも考えものだな。「ヴァルクさまー。結局誰に任せるんですー?」我の肩に乗っていた小さなガーゴイル、使い魔のオドがのんきに聞いた。「決まっているだろう」無論。「——個人取材は無しだ」我は魔広報部にかけあい、広報紙には四人の肖像だけを載せ、あとは適当に注釈をつけてもらうことにした。まあいずれにしても、ちょっとした特集だけでは今ひとつ実情はわかるまい。魔歌隊と第八班を深く知りたければ、直接『歌』を耳にしてもらいたいものだ。